注射とは、検査や治療のため、針を使ってからだに薬物を注入する方法です。注入された薬物は、リンパ管から毛細血管、静脈血管に入り、全身をめぐることで効果を発揮します。ひとくちに注射といっても、部位や方法によって種類はさまざま。ここでは、こどもが経験することの多い注射を中心に説明します。
皮膚のもっとも外側にある表皮と、その下の真皮のあいだに薬物を注入する注射です。注射の中では効果があらわれるまでにもっとも時間がかかりますが、治療ではなく、特定の薬物に対する反応をチェックするのが目的です。アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー検査で、この方法が用いられています。
皮膚と筋肉の層の間にある、脂肪がおもな皮下組織に薬物を注入する注射です。皮内注射のつぎに効果があらわれるまでに時間がかかりますが、長続きするのが特徴です。インフルエンザワクチンや水痘(みずぼうそう)ワクチン、日本脳炎ワクチンなど、日本で行われている予防接種の多くは、この方法が用いられています。
静脈という血管の中に直接、薬物を注入する注射です。すばやくからだ全体をめぐるため、注射の中ではもっともはやく効果があらわれやすく、命にかかわる緊急事態などで用いられています。点滴も静脈内注射の一つで、ふつうの注射にくらべたくさんの薬物や水分、栄養分を注入するのに適しています。
皮膚表面からもっとも深いところにある、筋肉に薬物を注入する注射です。静脈内注射のつぎにはやく効果があらわれやすく、刺激の強い薬物でも注入できるのが特徴です。おんなの子だけが受けるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンや、B型肝炎ウイルスなどの予防接種などは、この方法が用いられています。
他にも、注射針を背骨の腰の部分にあたる骨(腰椎)に針を刺して、中にある髄液(ずいえき)を採る「腰椎穿刺(ようついせんし)」や、胸骨や腸骨に注射針を指して骨髄の一部を採取する「骨髄穿刺(こつずいせんし)」のように、病院での検査や診断に利用される注射もあります。 腰椎穿刺はクモ膜下出血や髄膜炎など、骨髄穿刺は白血病や癌の転移など血液に関する病気の検査・診断のときに行われます。